始動講演2024
Kenji Kushida
1月17日に、経産省とJETRO主催の「始動」プログラムでアントレプレナーや大企業勤めの起業家の卵のメンバーに、新しくできた日本政府のパロアルト施設、Japan Innovation Campusで講演の機会をいただきました。みなさん、熱量が非常に高かったので、今の日本ではこういう人たちをいかにグローバルに繋げ、伸びてもらえるかが勝負どころだと強く思いました。
パンデミックでより明らかになったことには、日本がプチ鎖国している間に世界は大きく変わったということ、外に出て刺激を受けられる人が激減したのは非常にまずいということなどがあり、今回のような機会は多い方が良いということです。
また、こちらの受け入れ側からすると、団体で来てもらうほうが有難いです。シリコンバレーの日本人の層はそれほど厚くないので、個別の訪問だと会える人がだいぶ限られてしまいます。そういう意味でもこういうプログラムが拡大したのは良いことだと思います。
今回は冒頭にいつもの「こちらにいると情報量とスピードが圧倒的に早すぎて消火栓から水を飲むような感覚なので、その感覚も伝えたいんです!」というセリフを言い忘れましたが、濃厚な高速セッションでこちらの感覚もそれなりに伝わったかなと思います。
シリコンバレーと日本の関係を見ると、日本人の起業家はいくつもの矛盾するフィードバックを受けるので、大変です。
例えば、「シリコンバレーに来たのに日本人で固まっていては発展性がない」という一方で、「インドやイスラエル、韓国や中国人コミュニティーに比べて日本人のネットワークが弱い」という点。じゃあ他の日本人に会わずに自ら人脈を発掘するだけが良いのか、それとも日本人同士で助け合える要素があったらそれをジャンプ台にした方が早く発展させられるから日本人にも会うべきなのか。答えは、両方でしょう。
また、「短期間でシリコンバレー来ても役に立たない」や「政府の仕事じゃない」という視点と、「日本人留学生が激減している」や「わざわざツテがないシリコンバレーに行くよりも目の前の事業・仕事をきちんとこなした方が大事」と言う視点。長期の留学や事業のベースをシリコンバレーに移転される覚悟の人だけに絞ったら日本人のプレゼンスはさらに弱まるでしょう。短期間であっても、あまりの刺激に自らの方向性を大きく変える人も出てきます。その確率を上げるという考え方と同時に、ものすごくインパクトがありそうな人が少数でも現れれば、それは非常に価値が高いという考え方もできます。例えば今、スタンフォードの学部生から修士課程になっている人は高校生の時にシリコンバレーツアーで人生の方向性を思いっきり変えた人もいるわけです。でももう社会人になっていて、修士やMBAを取る1、2年間もなく、こちらの高コストには今すぐは耐えられないという人は全く来ないほうが良いのでしょうか?超円安の今、政府の支援がなければ成果が分からないシリコンバレートリップよりも目の前の事業に集中した方が良いでしょう、と言う「部分最適化」の選択を取らなくてはいけないというプレッシャーがものすごくかかると思います。
しかし、部分最適化の先に大きな価値はありません。
だからこそこういう機会で思いっきり刺激を受け、できるだけ人脈も作るのがベストだと思ってます。