CIGSコラム:2024年のアメリカ大統領選挙戦に向けて分断と政治制度を解説:シリーズその1
Kenji Kushida
キャノングローバル戦略研究所(CIGS)で新しいコラムシリーズを始めました。
2024年のアメリカ大統領選挙戦に向けて分断と政治制度を解説:シリーズその1
有権者2.8%の投票で「トランプ圧勝」となったアイオワ州共和党員選挙に見るアメリカの民主主義制度の課題
少数派による弾圧
アメリカ大統領選の指名選挙でトランプがニューハンプシャーも制し、日本では「次はトランプになるかもしれない」という現実味を帯びた心配をする人が増えています。そこから一歩下がってアメリカ型民主主義について少しずつディープダイブするコラムシリーズを始めました。
「民主主義とは」過半数で色々決めるものだと漠然とお考えではありませんか?でもアメリカ大統領は二度、票の数が少ない方の候補が大統領になってます(息子の方のブッシュとトランプ)
先週のアイオワ州の共和党員集会でトランプが51%勝ったわけですが、これは州の人口のたった1.7%、州の有権者の2.8%の票を取ったことで決まったわけです。今回のニューハンプシャーはアメリカの人口の0.44%しかない小さな州です。今回の党代表選びの選挙に投票した人は約30万人、アメリカの人口の0.1%です。
少人数であってもアメリカ全体を凝縮したようなサンプルだったらバランスよくアメリカ全土の民意を表しているかもしれませんが、アイオワでは-20度にも達した極寒の日にインパーソンで投票所に向かった共和党支持を選挙登録時に表明した人たちってかなりエクストリームなサポーターでしょう。ニューハンプシャーはまたルールが違います。
このシリーズでアメリカ型民主主義の制度が過半数からの弾圧を避けるために作った色々な仕組みが、逆に少数派による弾圧の可能性を招いている実情など、色々な素晴らしい学者たちの研究や、アメリカ政治学者の間では基礎知識であっても、我々一般の人は知らない力学なども紹介します。