CIGSコラム:2024年のアメリカ大統領選挙戦に向けた解説:シリーズ その3
Kenji Kushida
キャノングローバル戦略研究所(CIGS)での、アメリカ型民主主義についての新しいコラムです(その3)
以下は要旨ですが、コラムには分かりやすい図も入っているので是非ご覧ください。
2024年のアメリカ大統領選挙戦に向けた解説:シリーズ その3
アメリカの分断の本質とアメリカ型民主主義の制度における課題
世論調査を見るとアメリカは約29%が民主党支持、28%が共和党支持、そして40%が無党派です。
バイデン支持率とトランプ支持率を比べるだけではこの実態が見えにくく、支持率が高い方が選挙を勝ちそうだという思考モデルに陥りがちですが、実際は少し異なります。トランプ信者は何があってもトランプには投票します。これが共和党支持者のそれなりの割合、あるいは今の共和党支持表明をする人の大部分かもしれません。民主党支持者と表明した人が寝返ってトランプに投票するシナリオはなかなか考えられません。前回の投票と同じようにみんなが投票したら民主党の勝ちです。しかし、どっちの支持層よりも多いのが無党派層なので、この人たちがどうするかが最も大事です。
そうするとトランプ熱狂信者とバイデンを支持しない人の数を足して、トランプが勝ちそうだと安易に結論づけられないと思います。(もちろん、勝つかもしれませんし、8年前の選挙での彼の勝利は全く予想外だったので何も断言できません。)
でも、大事なのは、もうちょっと解像度が高い質問をして、その辺に注目することです。
例えば、無党派でバイデンは全く好きじゃないけどトランプはもっと嫌い、という人がどのくらいいるのか?価値観は伝統的な保守層で、昔は共和党支持者だったけど、選挙結果を否定したり、有罪判決も出ていて91もの訴訟を争っている候補者には流石に一票は入れられないという人がどれほどいるのか?逆に、前回は渋々バイデンに一票を入れたけどもう彼は支持しないので今回は色々な有罪判決が出ていてもトランプに一票、という人がどのくらいいるのか(このパターンの人は会ったことがないのでわかりませんが、そういう人がいる社会には身を置いていないのでそもそも感覚がないということは自覚してます。)また、前回は投票しなかった人がどれくらい今回は投票し、どっちに投票するのか?
ちなみに前回の大統領選挙はバイデンに投票した人がアメリカ人口の24.5%、トランプがアメリカ人口の22.4%程度で、有権者として登録していた人が人口の50.8%でした。